■第4回:ノイズを引きこまない為に

 試作初期段階ではケース内に電源を搭載した「内蔵電源方式」
としており、当然の如くAC電源スイッチを付けていた。
この試作機でカーオーディオを動作させ、最後に電源スイッチを
切ると問題が発生した。カーオーディオの時計や音質調整などの
動作設定がすべて消えてしまったのである。

 最近の携帯機器などでは不揮発メモリーが搭載されていて、
たとえバッテリーの電力がゼロになってしまっても、設定内容は
完全に保存されるのである。しかし、旧来のカーオーディオには
そのようなものは搭載されていない。常にカーバッテリーに
接続されていることが大前提として設計されているので、不揮発
メモリは不要なのだ。

 そこで、電源スイッチを廃止して、カーオーディオの
アクセサリー電源ラインだけが切れるよう、スタンバイスイッチとした。
これでカーオーディオ本体の+B電源ラインには常に電力が供給され、
設定内容は消えなくなった。

 ところで、カーオーディオに限らずオーディオ装置というものは
繊細な信号を扱う装置である。そのような装置に、様々なノイズが
重畳している家庭用コンセントの電気を筐体内に引き込んで
しまっても良いのだろうか。
 試作機の内蔵電源には有効なノイズフィルターを搭載しているので、
カーオーディオの動作には支障ないことは実証できている。
しかしノイズを引き込んでいること自体に疑問を感じていた。

 加えて、前述の通り電源スイッチは廃止したので、家庭用
コンセントの電気を筐体に引き込む必然性は全くないのである。
 ならば、いっそのこと電源部全てを外部に移してしまっては
どうだろうか。そうすることで筐体も小型になり、設置場所も
少なくなる。総合的に考えて「外部供給方式の電源」が得策と判断し、
最終形態が決まったのである。

LE801 開発秘話

■想定外

 このようにして完成形に近づいていったLE801であったが、
単なるケースといっても、誰でも組み込みができるように
仕上げるのは簡単なことではなかった。

 工作慣れした人達は、ネジを1本締めるときでさえ、無意識の
うちに全体のアライメントを感覚として捉えながら作業している。
開発エンジニア達もそうだった。だから、最初の試作品は、
営業マンでは簡単に組み立てることができなかったのである。

 『カーオーディオを箱に入れるだけなのに組み込みできない?』
 エンジニアから見れば全くの想定外だった。

 そこで、彼らは自分たちの「無意識下の作業」を分析した。
工具の取り回し、力の入れどころ、視点の位置などを意識的に
確認し、作業手順を見直した。
 更に、組み付ける部品をテーブルに置いてネジを締めるだけで、
全体のバランスなどを考えなくても一通りの組み込みが
可能となるよう、部品形状も見直した。

 組み込み手順書も、技術家庭科の教科書の如く丁寧に記述した。

 その結果、はじめて組み立てを手がける者でも25分あれば
組み込みが完了するまでに改善された。

■Luxury Enclosure

 型式の決定会議においては製品名の愛称も検討され、
一時はその案に決定した。しかし、残念なことに、登録済みの
商標に類似が見つかってしまった。まさに製品イメージに一致する
案だっただけに、全社でため息が漏れたほどであった。

 ならば、
  「せめて型式には製品コンセプトが表われるようにしたい」
 とのことで型式は<LE801>となった。

 「LE」には「Luxury Enclosure」の意を込めた。
随伴する数字には創業地八王子の「8」を、そして、
コードネーム<おかこん>の意を込めて「0」
(読みはオーではなくゼロ)、製品シリーズの初号を表す「1」を
組み合わせた。

■試作初期段階の「内蔵電源」

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■型式にその想いを込めて

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