【お客様事例】McIntosh MX406S+HD-DAC1

今回は、McIntosh MX406Sをホームオーディオであるmarantz HD-DAC1へ接続した事例をご紹介いたします。

今回の事例では、MX406Sのプリアウトの出力レベルとHD-DAC1の入力レベルに大きな隔たりがあったため、専用の減衰器付コードをご用意、納品させて頂いた例となっております。

S様より、McIntosh MX406S(以降MX406S)をLE802に組込み、USB-DAC機能にヘッドホンアンプをパッケージングしたmarantz社製 HD-DAC1(以降HD-DAC1)と接続してヘッドホンでMX406Sの音楽を鑑賞されたい、またあわせてMX406SのLE802組込みも弊社にて対応頂きたいとのご要望を頂きました。

 

MX406Sにはデジタル出力がないため、下図のようにHD-DAC1とはアナログ信号での接続になります。

ところが、HD-DAC1のAUDIO IN(アナログ入力)を確認したところ、一般的なホームオーディオのAUX INやLINE INと異なり、スマートホンなどのボリューム付ポータブル機器との接続を前提にした「小さな信号を入力する端子」になっており、MX406Sのプリアウトと、HD-DAC1のAUDIO INの信号レベルには10倍以上の開きがありました。

つまり、MX406Sプリアウト出力をそのままHD-DAC1のAUDIO INに接続してしまうと、「MX406Sの音量をかなり絞らなければならない」ことがわかりました。

オーディオ機器では一般的に、かなり音量を絞った状態ではSN比が悪化する傾向があります(音に対してノイズが増加してしまう)。前述のようにボリュームをかなり絞った状態でご使用頂いた場合、MX406Sがもつ本来の性能を生かし切れないことになりかねません。

もっと詳しく
HD-DAC1のアナログ入力であるAUDIO INは、ポータブルオーディオ機器のヘッドホン出力に合わせてあるため、一般的なアナログ入力に比べてたいへん高感度に設計されており、定格入力は200mVrms(rmsは実効値)となっています。
一方、MX406Sの定格出力は3000mVrmsですから、このままではHD-DAC1に対して過大な信号となる可能性があり、大きな音量の信号が入ったときには音が割れてしまうことになります。

一般的に、オーディオ装置での定格出力や定格入力は、その装置で最大の音量が確保できるときの信号レベルを表していると考えてよろしいので、前段装置の定格出力と次段装置の定格入力が一致したとき、システム全体が音割れすることなく、最大定格で運転されることになります。

幸い、MX406Sには音量ツマミがついていますから、これを使ってずっと絞ってしまえば、出力レベルの問題は一応解決できます。MX406Sの音量ツマミの可変範囲、時計の位置として7:30~16:30に見立てて出力を実測すると、ツマミが10:00くらいになったときに200mVrmsが出力されるようです(右図)。

しかしながらMX406Sにとって、この運転状態は決して感心できるものではありません。なぜならば、オーディオ機器では一般的には音量を絞った状態ではSN比(雑音の比率)が悪化してしまうからです。
走行中の車内に比べて、家庭の室内はずっと静かですから、SN比の悪さはすぐに気になってしまうことでしょう。せっかくの銘機をそのような状態で使うのは申しわけないことだと思います。

 

そこで、MX406Sの音量をあまり絞らなくても良くなるよう、接続ケーブルの途中に減衰器(アッテネータ:ATT)を挿入することにしました。

もちろん、この減衰器で雑音を発生させては本末転倒なので、ここには抵抗器だけからなる減衰回路(能動素子を含まない)を製作し、ケーブル途中に挿入することにいたしました(左図)。

組込みサービスのため、S様よりお送り頂いたMX406S到着後、簡単な動作確認を行わせて頂き、LE802に組込んだ上で、製作した減衰器付ケーブル(写真)を接続、期待通りの減衰特性が出ているか確認を致しました。

コードの途中、膨らんでいるところに「減衰器」が入っています。減衰器には静電シールドを施し、プラスチックケースに収納しています。このケーブルの電気的な特性を測定すると、可聴帯域(10Hz~20kHz)において減衰率がフラットとなっており、MX406Sの音質を損なうことなく伝達可能であることが確認できました。

最後にLE802に組込んだMX406Sに、減衰器付コードを取付けた状態で、納品させて頂きました。

 

納入後S様より、ご自宅で稼働中のお写真をいただきました。
HD-DAC1にお気に入りのヘッドホンを接続し、音楽をお楽しみいただいているそうです。

ところで、今回のシステム構成はDAコンバータのアナログ入力機能を利用して、更にヘッドホン出力を利用するということで、一見非主流的な使用方法ではないかと思われがちです。しかしながら、HD-DAC1に搭載されているアナログ回路、特にヘッドホンアンプに至ってはたいへん高性能なアンプのようです。

有名なホームオーディオ機器であっても、意外とヘッドホン出力についてはおまけ的な機能として付属していることが多いのですが、HD-DAC1では専用のヘッドホン出力回路が搭載されています。このような性能に着目してシステムを構築されたS様の技量に敬服いたします。

S様、お写真をお送りいただき、ありがとうございました。「部屋で楽しむカーオーディオ」を存分にご堪能いただけましたら幸甚です。

最後に弊社にて納品前の動作確認の際、撮影したMX406Sの動画を掲載いたしました。
あわせてご覧下さい(写真をクリックすると別ウィンドウが開きます)。

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