AMラジオの受信実験をしています<最終回>

 

今回、いろいろな条件で受信実験して、あらためてAM放送をきれいに受信することが難しいと再認識しました。近年、AM放送の受信環境が悪くなっているとは聞きますが、ここまで良くないのには閉口しました。
遥か数十年前、鉱石ラジオでさえも東京地区の放送すべてが聞こえた環境が懐かしい。自作コイルのQが低くて局の分離が悪く、混信状態でしたが、それも良い思い出です。
こうなってくると、被虐的ですが、現代においてはAM放送をHi-FiオーディオセットなみのSN比で機能させること自体が新しい楽しみとなってしまいそうです。

rodgood

 

さて、ここまでいろいろ受信実験を行ってきて、どうにかロッドアンテナによるAM受信でも実用的な受信状態が得られる条件がみつかりましたので、右の図で示します。

このように、ラジオの本体を通路に出し、アンテナも通路の南側や小路に持ってくることで、よやく実用的となったわけですが、これは結局、ポータブルラジオで受信結果の良かった場所に、アンテナもラジオ本体も持ってくる必要があったという結果になりました。

 

今回のカーオーディオとロッドアンテナによるAM受信実験では、<アンテナケーブルとして使っている同軸ケーブルが多くのノイズを拾っている>ということが分かりました。その理由は、AMラジオの受信回路はFMラジオのそれとは違って、アンテナ入力回路のインピーダンスが非常に高く、同軸ケーブルが分布定数線路として機能していないことに起因するようです。同軸ケーブルといえどもAMの周波数領域においてはただの電線だと考え、同軸ケーブルそのものがAMアンテナのつもりでいるべきです。
従って、カーオーディオの置かれた場所の近辺はもちろん、カーオーディオからFMアンテナのために引き延ばす同軸ケーブルの経路にもにノイズ源が存在しないことが理想です。パソコンやテレビゲーム機などは部屋を分ける程の気を使った方が良いかもしれません。

 

実験開始当初、クルマでAMラジオが受信しやすいのはアンテナが車体から斜めに出ていて、垂直成分も水平成分も適度にあることや、車体そのものがグランドプレーンとして機能するのでアンテナとしての効率が良くなっているのではないかと考えていました。しかし、こうしてみると、デジタル機器からのノイズを受けることが少ない環境であることが、良い受信状態を得られる理由と見た方が良いのかもしれません。もちろん、クルマへのラジオ装備を行うときには、クルマに搭載された多くの電子機器からのノイズを考慮している結果でもあるでしょうから、自動車メーカーの電装品実装担当者の努力にはこれまで以上に敬意を払いたいと思います。

 

ノイズがAM受信の良し悪しを大きく決めるとなると、良い受信環境を得る方法は、残念ながらケースバイケースとならざるを得ないようです。皆さんにおかれましても、ロッドアンテナを使って良い状態でAM受信を行おうとするときには、ポータブルラジオで良い受信状態が得られる場所を探してみてください。その結果によってアンテナケーブルやカーオーディオを設置する場所を決定してください。

 

では、受信環境を整え、良いラジオライフをお楽しみください。

 

2015年3月24日 | カテゴリー : tips, 基本技術 | 投稿者 : ハードちゃん

AMラジオの受信実験をしています<その3>

 

今回も電匠・ハードちゃんです。

ロッドアンテナを北壁面に設置したらAM放送があまりにも受信できないので、手持ちのポータブルラジオを使って、弊社周辺におけるAM放送の受信状況を調べてみました。

ポタラジ受信
すると、このアンテナを設置した北側壁面付近(歩道)では、やはりニッポン放送が良く受信できませんでした。NHKは第1、第2とも音声が明瞭に聞こえました。各放送局間で受信状態は、ロッドアンテナを用いたカーオーディオの結果と相対的に合っていると思います。

ポータブルラジオの受信位置を移動し、建屋西側の小路に入ったところでは全ての放送局が明瞭に聞こえました。ニッポン放送と文化放送は少しノイズが入りますが、それでも歩道側よりははるかによい受信状態です。

室内に入りますと、ニッポン放送は全く聞こえなくなりました(机A~B)。一般的に、鉄筋の建物内ではラジオが受信しにくいと言われますが、日本放送の周波数に合わせても本当にノイズしか聞こえません。

場所を変えて窓の近くに行くと、受信状態が少し改善されます。どうもノイズの大きさは、近くにどんな機器があるかで決まるようです。パソコンの近くではノイズが大きいといわれますが、机Bにはパソコンが設置してあるので、これが原因のようです。

ところで、AMアンテナの形式については大きく2通りの方法があるとのことです。
ひとつはカーアンテナで代表されるロッドアンテナを使う方法で、電界受信方式と呼ばれています。もう一つはポータブルラジオで用いられる方法で、セット内部にバーアンテナを設置した磁界受信方式です。バーアンテナとは、磁石のようなフェライト磁性体に電線を巻きつけたコイルのことです。
ホームオーディオのAMチューナーでは、ループコイルというAM専用のアンテナを用いますが、これも磁界受信方式です。AM放送の電波を感度良く受信する場合は、磁界受信方式の方が有利らしく、ポータブルラジオやホームオーディオでは磁界受信方式がよく採用されています。これに対し、FM放送の受信は電界受信方式による受信しかありません。さらに、カーオディオではFMとAMのアンテナを共用します。
このため、カーオーディオではAM放送もロッドアンテナによる電界受信方式となっています。

それにしても、ポータブルラジオの受信感度の良さは驚異的です。前述しましたが、NHK第一放送を歩道で受信した場合ノイズが全く無いとはいえませんが、放送信号を良く捉え、明瞭な音声が聞こえます。しかし、同じ場所に設置したロッドアンテナでは、ノイズの方が放送信号よりも大きく感じられます。電波を受けている場所が同じなのに、なぜこのような差があらわれるのでしょうか。
最悪、放送信号の捉え方が少々悪くても、ロッドアンテナを使った受信方法でノイズだけでも小さくできないものでしょうか。

ポータブルラジオでは建屋西側の小路でノイズの少ない受信ができていましたので、ここにロッドアンテナを設置すればもっと良い受信結果が得られるかもしれません。今回の実験ではアンテナケーブルの長さが短く、居室からの距離が遠くて設置できませんでしたが、次回の実験ではロッドアンテナを小路に移動して受信してみたいと思います。

2015年3月21日 | カテゴリー : tips, 基本技術 | 投稿者 : ハードちゃん

AMラジオの受信実験をしています<その2>

 

こんにちは。電匠・ハードちゃんです。
斜め380

今回のAM受信実験でLE801に搭載したカーオーディオは、パイオニアのMVH-380で、FM/AMのチューナーを搭載したUSB/チューナーメインユニットです。
このシステムを前回設置した北壁面のロッドアンテナに接続しています。

 

受信結果は左表の通りでした。北壁ロッドアンテナ感度

AMのノイズや信号の数字は聴感上の数字で、機械で計測したものではありません。
数字は、大きい方が大きな音がするということを示しています。たとえば、TBSの場合はノイズの方が放送信号よりも大きな音がしており、放送信号自体はNHK第二よりは良く聞こえた、という意味です。今回の実験では現れていませんが、信号が<5>ということであれば明瞭に聞こえて良い評価であることを表しますが、ノイズが<5>というのは良い評価ではなく、盛大に雑音が聞こえるという悪い評価を示していますのでご注意ください。

 

数字のそれぞれの大きさは以下のような基準で決めています。
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信号5  選局が容易で音楽放送も楽しむことが出来る
————————————————-
信号4  選局が容易で、情報を得るのに不都合なく、聞き取りやすい
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信号3  放送周波数を知らなくても選局ダイヤルを回せば受信でき、
|   放送内容から情報を得るのに不都合を感じない
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信号2  放送周波数を知らなくても選局ダイヤルを微調整すれば受信
|   できるが、選局範囲はピンポイントである。
|   放送内容の理解は可能だが長時間の聴取には耐えられない。
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信号1  放送周波数付近で何度かダイヤルの行き戻りを行いながら
|   微調整を行わないと選局できない。音声は聞こえるが、内容の
|   理解ができない。
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信号0  放送周波数付近で放送を探しても全く受信できない。
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ノイズ5  ノイズが盛大で、放送内容がまったく分からない
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ノイズ4  ノイズが常に放送内容を邪魔している
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ノイズ3  常にノイズが聞こえ、時々放送内容が分からなくなる
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ノイズ2  時々ノイズが聞こえるが聴取に不都合はない
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ノイズ1  音声が無音の時にノイズの存在が分かる
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ノイズ0  まったくノイズが聞こえない
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その他の局もご覧の通りの結果で、結局、今回設置したアンテナによるAM受信では、ノイズが多くて実用レベルとはいえない結果となりました。情報を聞き取るレベルということに限定すれば、なんとかNHK第1とAFNなら使えそうです。

これらはデジタルノイズの影響が大きく、実験室に設置したパソコンのひとつをシャットダウンすると、ノイズレベルの数字は1つ下がりました。

 

FMはどの局も良好で、明瞭な受信結果となりました。これはFM放送の仕組みがその名の通り周波数変調方式(Frequency Modulation)であって、もともとノイズに強い方式になっているためだと思います。

AM放送は、最近はデジタル機器が増えてきた影響で、受信環境が悪くなっているそうです。オフィスにかぎらず家庭でもパソコンが当たり前のようにある現代は、AMラジオにとっては受難の時代なのでしょうか。

今回の実験ではブチブチブチっというたいへん耳障りなノイズが多く聞こえました。アンテナケーブルをパソコンの傍へ這わせると、このノイズはさらに大きくなりました。また、アンテナケーブルを床に引き回しても同じようにブチブチというノイズが増加したのは意外でした。原因はわかりませんが、床には鉄筋が通っていますので、何か誘導を受けているのでしょうか。

アンテナケーブルを天井に近いところへ持って行くと、少しではありますがノイズが軽減されました。それでも、ニッポン放送だけは放送信号がまったく認識できませんでした。
今回の実験ではAMアンテナの向きが北方向になっているため、南北方向からの電波はたいへん受けににくい状態になっていると思いますが、弊社のある八王子からニッポン放送の送信所がある木更津の方向は、ロッドアンテナの指向性から考えてもそれほど悪い方向ではないと思います。なにか他の地形的条件によって受信感度が悪くなっているのかもしれません。

次回は実験室と建屋の周囲でAMラジオの電波受信状況を調べてみよう思います。

2015年3月20日 | カテゴリー : tips, 基本技術 | 投稿者 : ハードちゃん

AMラジオの受信実験をしています

LE801にカーオーディオを組み込み、AMラジオを受信するための
アンテナについて 実験をはじめました。

取付け状態2
一般的なご家庭の場合、テレビのアンテナを使うとFMアンテナの
代用とすることができますが、AM放送を受信しようとなると、
別途AM専用のアンテナにつなぎかえる必要があります。
しかし、カーオーディオのチューナーは1本のカーアンテナで
FMもAMも受信しているのですから、LE801でもカーアンテナを
接続してFMもAMも受信したいと思います。

 

今回の実験結果では、道路上のクルマで聞くほど明瞭には受信でき
ないだろうと予想しています。
これは、弊社が鉄筋建物内にあること、実験室内にはパソコンや、
多数のデジタル機器が稼働していることなど、ラジオ受信の条件
としてあまり良くない事が重なっているためです。

 

まず、カーアンテナを設置します。
設置場所は、感覚的には高い所、周囲が開けた所が良いと思いま
すが、なかなかそのような場所がありません。弊社の実験室付近
ですと建物北側の道路に面した壁面しか場所がありませんでした。
まずはこのような「とりあえず付けられる場所に付けたら」どの
ような受信状況になるのか、実験することにしました。

ケーブルコネクタ

 

カー用品ショップにはクルマに取り付けるアンテナが売られて
います。また、中古パーツでも出回っていることがありますが、
汎用のロッドアンテナでも代用できますので、出来るだけ長い
物を設置することが良い受信状態を得る条件だと思います。
今回、約1mの長さのロッドアンテナが入手できましたので、
これをLE801に接続して受信実験を行いました。

このロッドアンテナはアルミのアングルで作った基台に取り付け
ました。そこから1.7C-2VSの同軸ケーブルでLE801まで引き込ん
でいます。ケーブルの長さは5m位です。ケーブルと基台はF型
コネクタで接続しましたので、ケーブルのシールド(アース)は
基台に接続されています。
アンテナは地上から約2.5mの位置に水平に設置しました。
このアンテナを建屋北側の壁面に取り付けました。

 

次回、このアンテナでの受信結果を報告いたします。

2015年3月10日 | カテゴリー : tips, 基本技術 | 投稿者 : ハードちゃん

非専門分野での修理作業ということ


先日、MDラジカセの修理についてご依頼がありました。
弊社では中古カーオーディオの有効活用を提案する商品を展開していますので、
同様な機能を持つMDラジカセも修理ができないかというご相談でした。
当該MDラジカセは製造元でも修理ができない物となっており、 気に入って
使っていたのでなんとか直らないかということでした。

 

たいへんうれしいご依頼でしたが、自社製品ではない物の修理はできることが
限られていますので、どこまでご期待に添えるか不安でもありました。
結果的には、内部のMDローディングメカの引っかかりを緩和することで、
何とか使えるようになりました。弊社技術部門は電子回路設計に関わるハード・
ソフトの専門集団なので、正直申しまして、このようなメカ不良は不得意な
分野となります。今回のケースは精密な機構動作箇所ではなかったので、たい
へん幸運でした。

 

「設計の仕事してます」 と言うと、どういうわけか色々な物の修理を頼まれます。
設計といっても電子回路の設計を業としていますから、何でもかんでも直せるわけ
ではありません。また、回路にしてもアナログ、デジタルの区分けから始まり、
HDL記述の論理設計物まで含めると似ても似つかない物となる、たいへん広い分野
でもあります。

 

しかしながら、エンジニアではない一般の方々から見ると、どれも電気で動く家電
としか区分されません。そんなわけで、職場を離れた私事においても「おもちゃ」
からはじまり、扇風機、エアコン、テレビ、パソコン、ありとあらゆる電気製品
について修理できませんか?と尋ねられます。

 

それに加え、技術屋という気質は壊れているものを放ってはおけなくなる性分らしく、
「壊れてる」という話しを聞くと「直してみましょうか」と言ってしまうことが
多いのです。

 

こんなこともありました。
「Macが立ち上がらないので困った。データを回収したいのに修理できないと言われた」
「ではハードディスクだけ取り出して他のコンピュータにつないでみましょう」
まあ、これも修理みたいなもんです。それだけでも喜んでいただけますので、
やりがいがあるというものです。

 

メーカー、あるは専門の修理業者であれば、作業内容に責任と保証の問題があります
ので、どんなに簡単な修理と思われることでも、大がかりな保証体制と正規部品を
使用しなくてはなりません。規定から外れるような修理内容は絶対に行えません。
ユーザーからみるとなんとも不親切ですが、これは致し方ない事でもあります。

 

前述のような不具合発生に対応した例は、どれも弊社の非専門分野での修理作業と
なるので会社業務として正式にお受けしたことではありません。したがって長期に
亘って今後の動作を保証させていただくわけには参りませんが、普段から使っている
家電が壊れて困ってしまった方々に対して、何らかの形で救済のお手伝いができる
ことはたいへんうれしい事です。

 

ですから、何か壊れて困ってことがありましたら、まずご相談ください。修理まで
できなくても、何かお役に立てることがあれば請け負います。

2015年2月27日 | カテゴリー : 基本技術 | 投稿者 : ハードちゃん